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流れ流れて早幾年。いろんな役に立つサイトを紹介します。

4割返ってきた本をどうするか

http://book.asahi.com/news/TKY200710070036.html

再販契約で定価販売を義務づける出版業界で、「売れ残った本」をインターネット上で値引き販売しようという試みが、12日から本格的に始まる。これまでの絶版本や期間限定の割引販売から一歩進め、小学館集英社講談社文芸春秋などの大手出版社が、絶版の一歩手前の「在庫僅少(きんしょう)本」を提供し、半額で通年販売する。出版不況で書籍の4割が読者の手に届かず返品されるなか、価格を拘束しない「第2の市場」を創設して本の復活をはかるのが狙いだ。

 販売するのは、小学館集英社などの関連会社、昭和図書(大竹靖夫社長)が運営するインターネットのショッピングサイト「ブックハウス神保町.com」(http://www.bh−jinbocho.com/)。(以下略)

業界も4割返本か。僕は作ったものは4割戻ってくるのは当たり前だと思っていて、というか現実に数年前からそういうことになっているので、その4割を注文で回して黒字にするのが仕事かと。2000以上注文の取れないものは出さないことにしています。それはどうすればよいのかというと最初から刊行数の10倍以上のお客さんがいるところでしか本を出すときは作らないことにしている。


「4割は戻ってくるから注文で回せー」という作戦、なんでもできるわけではなくて、書籍で出せばわりとそれができるのだが、実はムックコードや増刊だと取次に「返品は自動断裁行き」を最初から申請されていることがあって、案外その戻ってきたものが注文に回せなかったり、出版社に在庫があるのがほんの数十冊で、店舗1店でも出荷に出せなかったりする。せっかくあとからまとめて売ってくれるというお店があってもそこに回んないのだ。


そういう編集的な不幸も営業次第なのだが、税金の関係上在庫を持たないことが多いのでなかなか難しい問題だ。だが、はっきりいえることがある。かつて部数が非常に多かった時代ならば、広告ペイもさらにあるので雑誌のほうがお金を刷っているように儲かった。しかし昨今の返品平均を見たら明白なのは書籍のほうが微調整もしやすいので、明らかに採算性が高い。あんまりどう売っていけばよいかわかりづらいテーマは、注文再出荷もできる書籍で作るのがいいと思う(長期戦に持ち込めるし)。


「4割返本はどうにもならないから2次市場に流すよ」、といっている上のソース記事の言ってることは正しいとは思いますが、結局昔からいってるけど取次が硬すぎて変わらないのがネックで数字が変わらない面もあって、はっきりいうと(金融的にはちゃんと回るとはいえ)流通のシステムとしてはもう駄目なんじゃないかとずっと感じています。まずいちばんの顧客であった駅前小書店をのきなみ応援しなかったこと、郊外型大書店を増やしたこと。というのは自分のために古くからの顧客はポイしたわけですよ。


大体いまだ書店に個人が注文しても入ってくる確証がないんだぜ、そんな業界ないでしょ。文房具だって問屋に電話すれば在庫あるかどうかくらいすぐわかるというのに。「出版社が在庫を持っていない」ということのせいにしているけど、取次にだって売れ筋以外は在庫が殆どない。


こういう矛盾した市場(2次流通とか、1次問屋)にITが上手く取り入らないものかと。


アマゾンはマーケットプレイスに力を入れるあまり新刊書でも欠品したらもう入荷を諦めちゃうんで、そういう意味では現在は非常に強いけれど、新本を優先していない時点で将来性は感じないんだよね。


ライブドアも本のレビュー(本が好き!)なんかやってる間に、カウイチ経由でもいいので物流で攻めてほしいもんですよ。だいたいネットで通販にいちばん抵抗がないのは本なんだよね。それはわかてったから中古買取から入ったんでしょうけど、実際の問題は買取よりもその中古在庫を回すこと。ライブドアブックスはどうしても書誌情報と在庫が弱い。ホリエモントラックバックで各店舗のアクセスを伸ばそうとか、ある程度アバウトなれど戦略家だったのだが、そういうのが不在になっている。まあブックスはカウイチ(プロミス等の資本参加会社)に売っちゃってるからいいのかもしれませんが。そういう面では通販に関しては倉庫を拡充して自社在庫を増やした楽天ブックスはしっかりしていますね。


たまに編集現場にいる人にアドバイスすることがあって、「うわぁ、こんなに売れてないよ!」と駆け込んでくる編集の人を見ていると、よく見ると注文票リストにその本が入れられてないとか、書誌情報が流れてなくてネットで一切注文できないとか、明らかに販売サイドのミスに巻き込まれてる例もよくあるんで、念入りに数字は確認すべきだと思うし、念入りにやっていけない人は生き残れないでしょうね。自分のせい、あるいは人のせいだという習慣がつきすぎているのだが、実際にはそれ以前に何かが間違っていることのほうが多い。

あ、こう書くと編集者みたいですが、今、僕編集者じゃないですよ。

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