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竹熊健太郎氏が(雑誌の)「出版界ヤバイ」といっている

出版―出版文化の崩壊はくい止められるか (21世紀のマスコミ)画像の図書を見るとわかるけど97年頃から既に業界の崩壊は論じられていたわけで、バブル崩壊期から「出版不況」はずっと変わってないんだよね。出版不況ではなくて単なる産業構造のゆるやかな崩壊でしかないんじゃないか。

http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-3ad1.htmlたけくまメモ

雑誌がもうヤバイことは、ここ5年くらいでジワジワ分かってきてはいたんですが、出版界の誰一人(俺を含めて)、どうすることもできずに手をこまねいていたわけなんです。手をこまねくには、こまねく理由もあったわけなんですが。でも、もう猶予のない所まで来てしまったのではないでしょうか。それについては、今後のエントリの中で考えて行きたいと思います。

港に停泊しているタイタニック号を業界だとすると、フリーランスの俺は船底にいるネズミみたいなものです。船が港に停泊している限りは、この船は数日後に沈むと思えば逃げ出すこともできます。でも出港してしまってから気がついても遅かったりするわけなんです。

ここで問題になるのは、我々が乗っているこの船は、果たして港で停泊しているのか、それともとっくに外洋に出てしまったのかということでしょう。暗い船底にいるネズミには、なかなかそのあたりの判断が難しい。俺はまだロープで岸と繋がっていると思ってるんですけど、その根拠はありません。(ソース記事より引用)

僕の所感(思ったことを順番に書いてるだけなんでまとまってません)。その点ご了承を

◆メジャーは泥船にならない(注:メジャー版元のマイナー誌除く)

・メジャー出版社についてる(フリーの)人はいまのところ大丈夫(でもメジャーでも実部数がマイナー出版社以下の本(例:若手専門のマンガの1万そこそこ雑誌とか)は泥船)大丈夫な理由は社員が辞め(させられ)ない、会社に内部留保が豊富、雑誌が解体しても組み直される可能性が高い。

◆フリーの人は副業or実家作業で自衛している

・既に私の知るフリーランスライターのうち、ここ数年の業界の変化で食えなくなり始めた人は多くが転業もしくは副業を持っている。作家もかねていながら実家に帰った人も数知れず。大丈夫な媒体もあるので、そういう人はそのまんまやってるけど、最初から実家だったり本業は主婦だったりと(独立した事業生計で)生活することを前提にしてない人も多い。

◆Webだからといって断る人は減った

・マンガ家も含めてWeb媒体の仕事は、値段のいかんに係わらず、もうあまり断らなくなっている。なぜならソースが貯まらないと本も出せないし、顔を売ってないと営業にも実績にもなんないから。

◆出版社のネット配信は手間のわりに益が薄い。書籍をネットで売ったほうが数は優位

・出版社は雑誌・書籍以外は権利ビジネスでしか採算を取れる手段はない。ただ、現状ではデジタル化や配信化権で契約しなおしのコストと編集者の手間も含めて進みが鈍い。書籍はAmazonなどでも売れるので、まだ本のほうが数的に優位。配信の類はまとめれば大きくなるけれど、単品パイが少なすぎる。

◆印刷所もデジタルだけで食ってくのは諦めて飲食店事業に参入しているらしい

・まんがの印刷所で既に外食産業に参入してうまくいっている所もある。印刷所が本業だけでなく外食をやる時代にすでになっている。あの赤い提灯の安い立ち飲みのチェーン店とかだ。

◆情報産業系の出版社は広告or金取れるサイトモデルの作成が急務である

・情報産業系の出版社はここ数年内にWebで(複数合計でいいから)千万単位はAD売上げの上がるサイトを作らないと確実にダメになる。ネコパブとかリクルートは特に早くからそのへんがわかってて頑張ってる。車系の雑誌社は特に生死に顕著だろうけどね。

◆IT系の業者は企業買収の立場からクレクレ厨に変わってしまったからあんまり重視できない

・IT系もあんまり一時期ほど羽振りはよくないので、売り込みには来るものの買収とかしてくんない。たかり体質が強いので、出版(業界)もダメだけどデジタル(業界の人)もダメ。IT屋さんはいいとこどりしか考えてない。ちゃんと採算とれるモデルをくれ。

◆いろいろやってる人や専門家は生き残れると思う。国から金取るとかの途も。

・たけくまさんは講師とかもやってるし専門家だから、文化圏の中では生き残れるであろうと思う。そろそろ国家事業としてフィルムセンターみたいなマンガ本保管専業の施設があっていいと思うんですけど。

◆アジア他国の状況を見ると書籍だけ残る傾向がよくわかる

・アジアの出版を見てるとスタンド売り以外の雑誌が大幅縮小→スタンド売りの薄い単行本が増える→書籍だけは縮小せず生き残る
という流れを踏襲するように思いますが。台湾、韓国、香港を見てるとそんな雰囲気です。
・アメリカとかの場合は、雑誌はスーパーレジ脇売りが基本なので、あまり大きな変化はないようです。スーパー売りのためか、生活必需誌、女性向け、芸能ゴシップ誌が強い。雑誌と書籍の流通網が違うので、あんまり影響は出てないような。アメリカの場合は都心部までいかないと書籍が買えないからamazonみたいなのが早く発展したような気がする。

◆雑誌がヤバイのは確かだけど書籍はまだヤバクない

・日本でも実際「出版界がヤバイ」といわれつつも実際は雑誌がヤバイ。「書籍の返本率は雑誌のそれに比べて許容範囲」ですから。書籍はネット書店やネット書店コンビニ受け取りで流通が革新されている訳で、また携帯などの新チャネルもあるわけで。

一方で雑誌はデジタル雑誌などの試みはされてますけど、流通が(せいぜい定期購読サイトが整備されている以外は)革新されてない訳ですから減っていきますよ。雑誌がデジタル化などの新チャネルに載せづらいのは、1冊に著作権者が50人も100人もいて、ごった煮であるので別使用の許諾を新たに得ることがしづらいせいもあると思います。

◆雑誌依存モデルは終わり。コンテンツを最適化できる会社が残る

・返本率は今後も抜本的には改善されないだろうから雑誌に依存している所は沈む。書籍リソースの多いところは、コンテンツを最適化(映画にするとか、アニメにするのかとか、海外でも売るのか等)できて、コンテンツの検索ボリュームが大きい所(作家名や出演者名、キャラクター名や書籍内容などに興味を持つ人が多い場合)は残る。そうでないところは沈む。


という推測を立てています。

で、どうなればいいか

◆広告モデルって売れなくてもいい方法論なんだからそもそもダメなんだよ

本の雑誌業界を立て直す方法は、そもそも広告モデルであることで既に本来のビジネスとしては(大手出版社サイドとしては、実売があってもなくても流通量が変わらなければOKという点で書店の利益確保の誘導手段が)破綻してるわけで。広告モデルも出版に廻る出稿費用は今後年々明白に減ります、一部ジャンル以外は。実売モデルになって、CVS以上に売ってくれる新たな流通が現れないとダメでしょうね。CVSより売れるもの…CVS以上の流通の1つであった弘済会すらあんなに店舗を閉めてるわけで難しいところですが、テレショップで直販するモデルとか、アメリカンなんとか系の保険みたいにやたらハガキDMで攻めるモデルとかは考えられなくもないです。ポニョ人気に乗っかって徳間書店の本は全部定期購読するとグッズがついてくるとかいうやり方もあるでしょう。といろいろ適当に考えていくと、多くは直注文のモデルになっちゃうのかな。

◆POSでシビアに決めてくれればいいのだが…

CVSは本来的にはPOSの力で外す外さないを決めている優秀な実売モデルなわけですが、実際のところはなんでこの本外れないの?と思うといろいろと流通タブーに触れることになるのでそれは止めておきます。


(追記)Web=雑誌の代替品 であるということも雑誌が崩壊する理由として大きいんじゃないですかね。それこそカオスな情報も得ることができて、メジャーな情報もあって、80年代以前の雑誌面してんのはむしろWebやブログではないかと


ところでちょっと前まではファッション誌は商品物販することでWeb・ケータイと共存できていたわけですが、思ったより早くファッション誌が崩壊しはじめたようで。雑誌部分自体を全てWebや携帯に持ってくることは難しいですが、見てるほうとしてはフリーペーパーや業者のカタログで代替できるからなぁ。


(追記2)リアルもやってる書店で在庫を(日計くらいのズレで)リアルタイムで出してる例としては成人向け書店のコアブックスがある。在庫が5を切ると1個ずつ刻まれる。あと紀伊國屋書店も店舗別の在庫POSと連動はしている。ヨドバシカメラ扱いの書籍とかも、ヨドバシのサイトで在庫のある店舗はわかるわな。

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