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韓国の出版事情に見る日本の出版の未来

●国策の「出版都市」もある。ソウルは大手書店依存型+ネット販売が基本型

昨日までソウル滞在しておりました。ソウルは韓国の出版事情がよく見える都市なのですが(都市として一極集中しているため)、街中には小規模書店がないかわり、大書店の占有率が高く、それ以外はネットで買うような仕組みで、他ごく一部のメジャーな雑誌は地下鉄スタンドで買うような仕組みになっています。また、地方に出版社だらけの出版都市がある(ギャラリー等を併設 http://www.konest.com/data/area_hot_report_detail.html?no=2320)など、国策として出版に力を入れているのはある意味で日本よりも進んでいる部分です(日本で多くの販売を占めるコンビニでの雑誌販売はラック1つ程度の占有が多く、日本より力が入っていないのが不思議ですが、考え方の違い*1と店舗面積*2によるものかと)。

●「雑誌は激減」

ソウルの大手書店、『永豊文庫』、『教保文庫』まで歩いて散歩し、本をいろいろ読んでいたのですが。

1年ほど前から、雑誌コーナーが激減しているのが現状ですが(代わりに洋雑誌が増えた)、専門誌以外は女性誌などファッション誌などしか残っていない感じを受けます。オタク系の媒体が、ニュータイプ以外は殆どはじっこに数冊マンガ雑誌、みたいになっていて、以前よりも展開が弱くなっている。

日本も今夏から大手の休刊ラッシュで騒がれていますが、近い将来はソウルのように雑誌は減っていくのではないかという印象を受けます(洋雑誌がメインとかにはならないでしょうけど)。

●「付録も激減」

あちらでは激しかった雑誌のおまけ戦争も、もう終わりが近くて、かつて(2〜3年前)よく女性誌には「オリーブオイル」や「化粧品3本〜5本セット」「掃除洗剤」、映画雑誌には「映画DVDが2本」、PC誌には「キーボード」なんかまでついていた時代もありましたが(しかも駅売店でもキーボードつきで売ってたし!)。

今回半年ぶりに訪れてさらに変わっていたのは、なんと女性誌のオリーブオイルと化粧品は健在なものの、同梱できなくなったのか、展示がショーケースに付録だけ入る形になっていました。「この雑誌の付録です」みたいな展示(教保文庫の場合)。他の雑誌は付録全滅です。

公正取引委員会的な組織が、雑誌より大きい付録をつけがちな韓国の過剰な付録戦争に対して動いた可能性も否めませんので、そのまま日本に当てはめられるものでもありませんが、現在の雑誌の衰退を考えるに、日本でも近いうちに、採算度外視の商品以外では付録戦争が終わるのではないでしょうか。

●書籍を軸にした文化総合ストア化

ちなみに、以前にも書いてると思いますが、大手書店では、書籍が盛況です。売り場面積は減っていません。むしろ雑誌を縮小した分増えている。

他、日本にないことは、大手ショップは実質的に本をメインとした総合デパート化しているということです。セレクトグッズや、時計など、バッグ、IT系電化製品、文具全般、ファンシー、飲食店、フラワーアートストア等などもオマケ的に存在しています。かつて日本の書店もレコード(CD)店と併設だったり文具と併設だったりしていますが、ツタヤ以外でのそういう業態は衰退した感があります。なぜあちらのお店ではそれが健在かというと、書店6:その他4くらいの割合であることや、回遊性があったり(通路が、棚と棚の間の小さい通路ではなく大通路があり、店内をぐるぐると廻る構造になっていたり)、品質がまともなものだけを扱っているということではないのかなと思います。

良質な品なら輸入してまでも販売しているというところがまったく日本と違う感じです(例:以前は扱っていなかった、軽量バッグのNOMADIC http://www.nomadic.co.jp/frameset/selecta/selecta.htmlがありました)。銀座・伊東屋ぽいというか。雰囲気としてはもう少し若者に近く、ヴィレッジヴァンガードがちゃんと本にも本腰を入れている感じでしょうか(VVでも「いや、本腰入ってるよ」と言われるお店の方もいらっしゃるとは思いますが、最近、サブカル本の求心力の低下のせいか、グッズのほうがメインな印象のお店も多いので)。『教保文庫』ではフードコートが書店にあるところも、かなり驚きです。台湾では文具止まりなので、ほんとに不思議ではあります。

日本でもメガ書店の類だと一部に地下モール街(例:紀伊國屋)やコーヒー店(例:ジュンク堂)くらいは併設されていますけれど、あくまで書店との地続き感には乏しい感じです。資本がないと難しいですけど、こういうワンダーランド的書店を作りあげることが(中堅以上の書店の)生き残り策なんじゃないのかなぁ。なんというか、若者から30代くらいまでが娯楽として集まってくる感じですね。
店内回遊性を高めることで、立ち読み、座り読みの客でさえ金に換えてしまう発想なんじゃないかしら。

*1:日本の場合はコンビニでの立ち読みは「店内に滞留している人がいる」というサクラ的意味あいとして放任。

*2:韓国の場合はやや店舗が狭いので在庫が置けないのかも

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