tx別館

流れ流れて早幾年。いろんな役に立つサイトを紹介します。

雑誌は売れないか

出版クラッシュ!?―書店・出版社・取次 崩壊か再生か 超激震鼎談・出版に未来はあるか?〈2〉なんか池田信夫Blogアルファブロガーの提灯書評が非難された影響で投下されたエントリぽいですが。

http://d.hatena.ne.jp/yasuyoshi_h/20080211 (The twilight world -February-11-2008 雑誌が売れない)


僕の知り合いの周囲では、雑誌は売れてないけど書籍は売れてる。
雑誌の構造的な問題だと思う。産業によっては雑誌広告を見切ったりしてる部分もあるだろうけど。

出版業界は一族経営が多く未上場がほとんどである。それゆえ、いくらでもいろんな意味でごまかしが利いてきた。その1つが公称部数である。他にも税金の世界とか、再販で守られている点とか、いわゆる線引きした本として2次市場に流されてる部分はグレーゾーンとか、上納制とか、いろいろ未上場故に表に出ない適当なことがある。


昔は雑誌を公称部数でやってても、代理店やらいろんな調査で第三者からも実部数はほぼ読める状態だったので文句を言われることもなかったが、公称自体は落ちないのに実部数が落ちていくんだから、そりゃ広告に文句も出る。
また、最近は個人情報保護やら内部統制やらで、中間から外への情報も出なくなってきた。
これのせいで、想像される実数と、推定数の間に大きな乖離があっても、外ではわからなくなってきている。(=よって広告効果がどんどん落ちていく)


実際、(これからいう話は書籍の例なので)広告は関係ないが、たとえば作家の印税情報である程度正確に部数が得られているにもかかわらず、調査をする業者がうその数字を出してくることがある。1/3倍くらいで実際の数とものすごく違っている例を見聞きしたりすると、調査の意味がないのだ。中間業者は今後、まともな数字を出す気がないようである。


雑誌も書籍も、今後は、出版科学研究所のような間に立った研究組織みたいな建前がない限り、業界紙以外では、もうすぐある程度裏づけのある情報は安易に入手できなくなると思われる。


タダのデータ(関係企業から口頭で得られるようなデータ)でマーケティングをやってる版元は、多分、販売ベースでの(紀伊国屋とか、BIG-NETとか大手書店複数ベースの)有料データを取るようにならないと、藪から棒に適当な本を出してたまたま当てるところ以外は、マーケティング自体できなくなってつぶれると思う。


インターネット業界も、類似サービスのデータ収集をしようとしてもいくらかけていくら儲かってるなんていう情報は、関係者や課金業者に太いパイプでもない限りあんまりもれ伝わらないが、
公開されているアクセスデータとかAlexaなどの類推できるデータ(しかもそれらの多くが日本の法規の手の届かないところにある)や、公開企業の決算情報とかからある程度類推できる部分はある。正確かといったら自社発表データに虚飾がある可能性はあるが、虚飾するにしてもたいした方法ではないのでネットの場合、複数データをあたることでばれやすい。


インターネットのサービスも、アクセスに広告が付随している面では雑誌と非常に構造が近いが、インターネットの場合の優位点は、広告効果が簡単に測定できることだ。


インターネット業界の人たちは雑誌広告においても正確なデータを計測し、出稿判断をしている。出会い系サイトやDellの広告等は、雑誌の広告単位でURLに数字を振り、ネットに飛んでサービスを購入していく実際の効果を計っている。だから、シビアだ。たとえばネトランが部数を落として版元が変わったら、ちゃっかり一度広告を引いている。


まだ今の大半のナショナルスポンサーはネットだけで販売を行っていないからそれをやらないが、もっとネット販売が進んで、彼らがそれをやり始めた時、本気で雑誌広告も、雑誌出版も取捨選択の線上に立たされる。


そのうち、効果がはっきりしないと思われる中堅軸の雑誌版元は「正確なデータを出さないと立ち行かない」状況になると思う。


ネットのせいで雑誌が売れない、今回池田信夫Blogで書かれたような「ダイヤモンド社のビジネス誌」ならそれも言うだろう。Webに類似サイトがあるから。


ただ、雑誌販売においてすべての分野がネットに置き換えられたわけではないので、実際は、たしかに買い控えの傾向はあるにせよ、それ以前に10年くらい数値改善できない現況を、みんながネットのせい、(あと携帯出費のせい)といういいわけをしているだけだ。数値改善できない理由は各社の問題もあるにせよ、取次の無策にもあるのだが、取次を敵にするのは出版業界唯一のタブー。そのメディア内ではたいした議論すらできない。(頭に載せている本ですら8年前の本だ。8年前にすでに転倒は予想されていたわけで、最近はみんなあきらめてるからそんな本もあまり出ない)


あと、書きそびれたので最後に書籍の話へ戻るが。書籍がなんで売れてるのかといったら一回配本で出ても、半分は戻ってくる。戻ってきても、待たせている注文によって再出荷され、待っている客や、適正なお店に回るから数字がまともになるのだ。


まてよ、ということは、やっぱり今の配本がおかしいってことだよなぁ。

Ads by アイモバイル